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組織の7Sとは?あなたの組織はしっかりと機能していますか?
公開日:2022.10.3
組織を分析し、問題を改善するためには7Sと呼ばれるフレームワークが利用されることもあります。大手コンサルティング会社が提唱した7Sは、組織構成、戦略、システムの3つのハード面と、スタイル、人材、スキル、共通の価値観の4つのソフト面から成り立ちます。
企業の成長、前進には、組織の成長が欠かせません。
組織の現状を把握し問題を解決するためのフレームワークとして活用されることの多い7Sを解説します。
7Sの考え方、導入事例、さらに診断方法やワークシートの活用方法も解説します。
組織の問題に悩んでいる企業はぜひ参考にしてください。
目次
組織の7Sとは?
7Sは、組織のマネジメントに重要な7つの概念を指します。
7Sは相互に影響しあっており、どれか一つが欠けても良い組織として成長できません。
「組織の7S」「マッキンゼーの7S」「7S分析」と呼ばれることもあり、人材や組織のマネジメントにおいて大きな影響力を持っています。
7Sを元に組織の現状を把握し、問題点の解決、組織の成長につなげていけます。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの7S
組織の7Sを提唱したのはマッキンゼー・アンド・カンパニーです。
マッキンゼー・アンド・カンパニーはアメリカの大手コンサルティング会社です。
世界的に有名な企業で、現在でも世界中の企業のコンサルティングを行っています。
これまでの組織のコンサルタントのノウハウを詰め込んだ考え方が7Sです。
そのため、多くの企業や組織が7Sの考え方に則って組織の改善を試みています。
7Sの具体的な7つの概念を一つずつ解説します。
7Sは3つのハード面と4つのソフト面で構成されています。
ハードのSが3つ
ハードのSは計画、意思が重要になる要素です。
計画や意思が明確であれば比較的実行しやすく、成果も出やすいです。
一方で計画、意思が曖昧だったり組織全員で共有できていないと上手く成立しません。
Structure(組織構造)
組織構成は、その名の通り組織を構成している形態のことです。
誰がトップなのか、誰が意思決定権を持っているのか、階層は深いか浅いか、上下関係はどれくらい厳しいのか、そしてどの部署とどの部署のつながりが強いのかなどを組織図で明確にします。
組織構成は、業務内容ごとに分類する方法、事業部ごとに決定権を与える方法、小規模なチームごとに意思決定権を与える方法があります。
自社の組織がどの組織に分類されるのかをまず確認しなければなりません。
Strategy(戦略)
企業、組織がどのような戦略を持っているのかを確認します。
企業理念やコンセプトなど、組織全体をどの方向に持っていきたいのかを明確にしなければなりません。
他にも、販売している商品、サービスを今後どのように展開、成長させていきたいのか、そのためにはどのような企画や開発、製造方法が適切なのかなども考える必要があります。
戦略が明確になれば組織の認識も共有しやすく、同じ方向に向けて足並みを揃えられます。
System(システム)
システムは、組織を構成する人材の評価方法、採用基準などを示します。
優秀な人材のスキルや特性をより活かせる場所はどこか、どのように成長させられるかを考える部分です。
システムをきちんと運用するためには、明確な基準や認識の共有が必要です。
評価基準に透明性も求められます。
システムに問題があると組織を構成する人材から不満が集まりやすくなり、離職率の上昇、モチベーションの低下を招きます。
ソフトのSが4つ
7Sを構成する残りの4つはソフト面に分類されます。
計画が明確であれば実行しやすいハード面とは違い、ソフト面は人材を変えていく必要があるため実行から結果が出るまでに時間がかかります。
思うような結果が出ないこともあるため、慎重に分析、改善策の導入を繰り返しましょう。
Style(スタイル)
その組織ならではのスタイル、特徴、風土を指します。
どのような空気間で業務を遂行しているか、暗黙の了解、ルールやマナーはあるかを確認します。
スタイルは組織ごとに違うため、組織を構成する人材にとっては非常に重要です。
居心地がいい組織、切磋琢磨できる組織であればモチベーションを高め、意欲的に活動できます。
組織への愛着心や忠誠心も高まり、離職率の低下を目指せます。
一方で組織の風土が合わない人材は離職してしまう可能性が高まります。
組織のスタイルに問題はないか、理想とする組織像と現状にズレはないかを確認しましょう。
Staff(人材)
組織を構成しているすべての人材を把握する必要があります。
総人数や部署ごとの人数だけではなく、どのような素質を持っているのか、組織に不満を持っていないか、人材育成はどれくらい進んでいるかなどを詳細に確認しなければなりません。
組織を成長させるためには、人材一人ひとりの成長も欠かせません。
組織に満足し、この組織のためにがんばりたい、この企業での仕事を続けたいと思ってもらうことで、組織の成長につなげられます。
また、新しい人材を採用する際にもどのような特性を持つ人材を採用するかを組織内で共有する必要があります。
Skill(スキル)
組織を構成する人材がどのようなスキルを持っているかを確認します。
社内で独自に有効なスキル、ノウハウの他、個人が持っている特性、資格、経験なども含まれます。
組織の成長のためにスキルが必要な場合、人材にスキルが欠けていると効率的な成長は期待できません。
まずは人材一人ひとりのスキルを高める育成からスタートする必要があります。
時間はかかりますが、スキルが高まればその分人材一人ひとりができることが増え、組織の成長にもつながっていきます。
企業の経営陣と従業員の価値観が一致しているかを判断する基準です。
価値観やビジョンにズレがあると、思うような結果を得られず、組織を一つにまとめにくくなります。
何のための業務なのか、成長した結果何が得られるのかなどを明確に説明し、業務における価値観を共有することが大切です。
7Sから分かること
7Sを用いれば、組織の現状を把握できます。
その結果今何が不足しているのか、何が問題なのかを考え、それらを補うための改善策も見つけられます。7Sを構成する3つのハードと4つのソフトはそれぞれ関係していますが、ハード面の方が改善はスムーズです。
そのため先にハード面を変え、徐々にソフト面に影響を与えていくような改善策を導入するほうが成果が見えやすく、実施のモチベーションを維持しやすいです。
7Sの失敗事例:Nokia
Nokiaは最初、携帯電話業界のパイオニアでした。しかし次第に市場シェアを大幅に失い、最終的に Microsoft に買収されました。
これらを組織の7Sに当てはめてみると、それぞれの「S」においての失敗が見えてきます。
戦略: 携帯電話業界は日々進化を続けており、Nokiaは競合他社と戦うためにコストとボリュームを最適化し、パフォーマンスを強化し、セキュリティを最大化する必要がありました。
しかしながらNokia はコストリーダーシップアプローチ(=競合他社と比較して安い価格帯で商品やサービスを提供する、あるいは原価を抑えて利益率を増大させることで競争における優位性を確立する戦略)を選択し、イノベーションとパフォーマンスの面で競合他社に後れをとりました。
Appleは革新的なイノベーションを打ち出し、最高のパフォーマンスを更新し続けてきました。
また、Nokia社はスマートフォン市場での動きが遅すぎただけでなく、モバイル市場の低価格帯における競合でも先手を打ちませんでした。
低価格帯製品では、HTC社やHuawei(華為技術)社、ZTE(中興通訊)社などの開発途上市場で後れを取ってしまった。
Nokiaが戦略(Strategy)において、イノベーションやパフォーマンスにも大きく舵を取っていたら、開発途上市場での低価格帯に注視して迅速に対応していれば現在の携帯電話業界は大きく変わっていたかもしれません。
構造: Nokia にはトップダウンの階層構造があり、従業員はコミュニケーションが制限されたサイロ化された環境(業務プロセスや業務アプリケーション、各種システムが孤立し、情報が連携されていない状態)で働いていました。Apple のような企業と競争するために、Nokia は協調的なアプローチとともに、素早く回転の速い構造を選択すべきでした。
サイロ化されて孤立した環境では企業内での連携が疎かになり、他の部署とのコミュニケーションも難しく、新しい発想を取り入れることもままなりません。
Appleのような競合他社と戦うには厳しい環境だったといえるでしょう。
スタッフ: 2007 年から 2010 年にかけて、ノキアは驚くべきことにCTO(最高技術責任者)の地位をトップマネジメントから外し、離職率が非常に高くなりました。
そもそも、新入社員は十分なスキルを持っていなかったので、最先端のブランドとしてのノキアの没落を引き起こしました。
携帯電話市場で14年間首位を独走した後にほんの4年間で株式時価総額の90%を失ったノキアCEOの言葉「何もミスはしていないのに、なぜか負けた」は有名です。
スタイル:リーダーの技術力が低いため、従業員の士気は低かった。会社のイノベーションと成長を促進するために、適切なバックグラウンドを持つ人材を採用する代わりに、Nokia は、技術の進歩と最先端の設計を支援する変革のリーダーシップを必要としていました。
7Sの成功事例:Apple
戦略:製品のデザインと高度な機能に特に重点を置いた差別化ビジネス戦略です。また特徴的なのは、さまざまなデバイスとソフトウェアが同期するクローズドシステムです。この戦略は顧客にとって高いスイッチングコストがかかります。他社製品に乗り換えるときに、多くのデバイスを買い替えなければなりません。他社から見ると、非常に介入しづらい状況と言えます。Apple側から見ると、既存の顧客との関係を活用して他の製品やサービスを提供する機会が得られます。
構造:2011 年 8 月にティム クックが CEO の役割を引き継いで以来、Apple の組織構造と文化は、あらゆるレベルの従業員の意思決定の自律性を高めるために変更されました。Apple の組織構造には、上級管理職による強力な管理、昇進の機会による従業員のモチベーション、社内の権限と責任の明確な分割など、多くの利点があります。
Apple Inc. レポートには、Apple McKinsey 7S モデルの完全な分析が含まれています。このレポートは、SWOT、PESTEL、Porter’s Five Forces、Ansoff Matrix、Apple のバリュー チェーン分析など、ビジネス研究における主要な分析戦略フレームワークの適用を示しています。さらに、このレポートには、Apple のリーダーシップ、ビジネス戦略の組織構造、および組織文化の分析が含まれています。このレポートには、Apple のマーケティング戦略、エコシステムに関する議論も含まれており、企業の社会的責任の問題に対処しています。
7Sの診断方法
組織が7Sにおいてどのような状態かを診断する方法を解説します。
・現状の把握
・問題の明確化
・改善策の作成
・実行、観察
の4段階にわけて、組織の分析と改革を行いましょう。
現状を把握する
まずは組織の現状を把握します。
現状把握には下記で紹介するワークシートを活用してください。
7つの観点から組織を観察することでぼんやりとしていた組織の問題が浮彫になります。
また、7Sは「共通の価値観」を中心に円形にそれぞれが影響しあっています。
その点も踏まえて、まずは共通の価値観から現状の把握を始めましょう。
問題点を明確にする
組織にどのような問題があるのかを明確にします。
7Sの中で著しく問題が目立つ場合はその点から改善していきましょう。
組織によっては複数の問題がある場合もあります。
複数の問題の中で共通する問題、別々に考えなければならない問題をピックアップし、それぞれの重要点を見つけてください。
改善策を作成する
問題点が明確になったら改善策を作成します。
改善策を作成するためにはまず組織として理想のあり方を決定しなければなりません。
一般的な改善策を導入しても、組織独自の特性に合っていなければ意味のないものになってしまいます。
現状をよく観察した上で何を補うべきか、どのような対策が効果的かを考えてください。
7Sで問題点を改善するために非常に重要なポイントです。
実行の結果を観察する
改善策を導入したあとも随時組織を観察し、どのような変化が現れたかを確認してください。
良い結果が出る場合もあれば悪い結果になる可能性もあります。
また7Sはそれぞれが影響しあっているため、一つの項目が伸びると別の項目も同時に良い結果が出たり、反対にこれまで問題がなかった点で悪い結果が出ることもあります。
結果を踏まえてさらに新しい改善策を導入するか、現在導入している改善策の一部を変更するかなどを考えていきましょう。
7Sのフレームワークは一度取り入れたら終わりではなく、何度も繰り返して利用して組織を成長させるものです。
下記のワークシートも活用して、随時現状の確認を行いましょう。
7Sワークシートとは?
7Sを組織の改善に導入するためにはまずワークシートを用意する必要があります。
ワークシートは下記の表を参照してください。
現状 | 理想 | 問題点 | 改善案 | |
---|---|---|---|---|
組織構造 | ||||
戦略 | ||||
システム | ||||
スタイル | ||||
人材 | ||||
スキル | 技術力が足りずに新規開発ができない | 新規開発の技術力と余力がある状態が望ましい | 技術力向上の時間がない | 業務時間内で勉学や資格取得に使用できる時間を設ける |
共通の価値観 |
7Sワークシートの使い方
上記のワークシートのそれぞれの概念の現状、理想、問題点、改善策を記入していくだけで、簡単に7Sの考え方ができます。
最初にすべての現状から書き出すことでどのような組織を目指すべきか、そのために何をすべきかが見えてきます。
組織を改善するためには理想の組織像を明確にしておく必要もあります。
改善策を導入した結果満足できる結果が得られるかどうかを考えつつ、慎重に理想の組織像を考えましょう。
7Sを利用する時の注意点
7Sを組織改革に導入する時の注意点を解説します。
共通の価値観を重視し、ソフト面にも着目して改善策を考えましょう。
共通の価値観を最重視する
7Sの中でも最も重要なのが共通の価値観です。
価値観を共有できていないと、組織としてどの方向に進めばいいのか、成長後のビジョンも共有できず、他の6つの概念にも悪い影響を与えます。
なぜこの業務を行うのか、今後どのように成長していきたいのかを今一度明確にし、組織を構成するメンバー全員に周知してください。
ソフト面への着手も怠らない
7Sの中でも着手しやすいのがハード面です。
改善に時間やコストをかけず、比較的スムーズに良い結果へ導けます。
一方で、ハード面に注力しているとソフト面のカバーがおろそかになります。
上記で解説したように共通の価値観が共有されていないとハード面への良い影響も出にくくなる可能性があるため、ハード面の改善も行いつつソフト面への着手も怠らないようにしてください。
ソフト面が崩壊する可能性を考える
ハード面にばかり注力するとソフト面が崩壊する可能性もあります。
大手企業は合併を繰り返してさらに大きな規模になっていくことも珍しくありませんが、合併によりさまざまな問題も起こります。
スキルを独占したり、経営陣が官僚化したり、合併に不満を持つ人材が離職したりするケースも珍しくありません。
ソフト面は7Sの中でも結果が出るまでに時間がかかりますが、ソフト面の崩壊を防ぐためにも日々時間とコストをかけて育成していく必要があります。
7Sで組織の問題を改善しよう
組織の分析のために用いられる7Sを解説しました。
大手コンサルティング会社が提唱した7Sの考え方は、世界中の組織で用いられています。
戦略、組織、システムの3つのハード、スキル、人材、スタイル、共通の価値観の4つのソフトで成り立っており、どれかが欠けても良い組織は目指せません。
ワークシートを使って簡単に現状、理想を比較できるので、結果から最適な改善策を探してみてください。
ハード面だけでなくソフト面の改善も続けることで、組織をより強く、大きくしていけます。
この記事を書いた人