オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
テレワーク
公開日:2021.6.8
テレワークが浸透するなか、やむにやまれぬ事情で出社を余儀なくされる社員が、出社しなくて済む従業員に「ずるい!」という感情を持つケースがあります。企業の体制やセキュリティ対策の問題も検討する必要があるにも関わらず、そういった声は実際に少なくありません。
では、テレワークや在宅勤務に対して「ずるい」という心境はどういった心理からくるものなのでしょうか?不満を感じている社員への対処方法について解説していきます。
目次
働き方改革の一環として以前から推進されていたテレワークは、新型コロナウイルスの感染拡大を予防する観点から一気に世の中に広まりました。自宅で仕事をする在宅勤務の他に、カフェ、コワーキングスペースなどを活用するスタイルや移動中の新幹線の車内で仕事をするなど、ひとことにテレワークと言っても形態は様々です。
いずれにしても、テレワークは社員が通勤ストレスから解放され、時間を有効に使えるためプライべートが充実しワークライフバランスも整って、仕事への意欲が高まるといった効果があります。企業側としても、交通費、オフィス賃料、光熱費が削減でき、人材確保もしやすくなるといったメリットがある点は把握しておきましょう。
企業としても、使用する機器やソフト、ネット環境の進化などによって、テレワークは少し前とは比べ物にならないくらい手軽なものとなりました。セキュリティやシステムに問題がなければ、どんな場所にいてもオフィスにいるときと遜色なく仕事ができる時代になっています。エンジニア、デザイン系、クリエイティブ系などのみならず、いまでは営業、経理、人事など様々な部署のオンライン化が進んでいます。
業務に関してはデジタル化が進んだものの、電話対応や郵便物の受け取り・発送、押印が必要な書類の処理などのために、テレワークに移行できない部署もあります。店舗勤務や工場勤務をはじめ、出勤が不可欠な業種も少なくありません。そのため、テレワークができる社員に対して「ずるい」「不公平だ」という感覚を持つ社員が出てくることも少なくありません。
それこそ前時代的な考え方ですが、企業として対応できていない場合、上司の目がない場所で働いているテレワーク社員に対して「さぼっているのではないか?」という疑念がわくこともあります。また、「出社している社員にばかり仕事が割り振られている気がする」といった不満が募っていく可能性もあるでしょう。
「テレワークはずるい」という考えの裏には、「企業に出社して働いてこそ仕事」という、旧来のカルチャーの影響もあるのは確かだといえます。しかし、テレワークは、パフォーマンスを高めるための手段の1つです。そのため、意識を変えるための研修が必要になることもあるでしょう。
体制さえ構築できれば、テレワークは社員にも企業にもプラスとなることが多いといえます。出社を余儀なくされる社員からは、以下のような不満の声が上がりがちです。
【出社社員の不満】
「在宅勤務中にサボっているのではないか」
「オフィスにいる社員にだけ負担がかかっている気がする」
「その場で声をかけられず反応が遅れるため、業務スピードが落ちる気がする」
「テレワーク社員との一体感を得られない」
「企業から支給された機器を私物化しているのではないか」
他にも、カフェなどでゆったり働けることをうらやむ事例や自分たちだけテレワークに移行できないために「不当な扱いをうけている」と感じる声もあります。
その一方で、テレワーク社員側からも以下のような不満の声が上がっています。
【テレワーク社員側の不満】
「チームの一員になれているのか心配」
「必要な情報がリアルタイムで入ってこない気がする」
「出社している社員を中心に仕事が回っている気がする」
「出社している社員の方が高く評価されるのでは?」
「機器、ネット環境などの設定が面倒」
「ちょっとした費用が自己負担となる場合がある」
こうして並べてみると、どちらか一方だけに不満があるわけではありません。企業側には双方の不満を解消し、どんな働き方をしていても社員が納得できる環境を整えていく必要があります。また、企業は双方の不満やメリット、デメリットを伝えることなどの取り組みによって双方の理解を促進することで不満を起こりにくくすることが可能です。
出社社員とテレワーク社員、双方の不満を解消し、社員全員が力を結集するためには企業の工夫が不可欠です。たとえば、対策を立てず、コロナ禍に煽られて行き当たりばったりでテレワークへと移行した企業では、社内の調整が不完全で、社員から不満の声が上がりがちです。改めて対策を練り、環境やルールを整備して、理想的な業務形態を作っていくことが大切です。
テレワーク運用時に出社している社員の不満を解消するためには、「各部署の上司が中心となって、誰が、どんな仕事を、どんな就業形態で進めているのか分かる」状態を作ることが重要です。これを可視化と呼びます。オンラインで情報を一覧できるようなシステムが有効だといえます。また、各自の業務進捗状況もオープンにできれば「誰かがサボっているのでは」という疑いがなくなり、チームの一体感も増すでしょう。
また、「担当者がテレワークで出社していないので事情が分からない」という事態を避けるために、必要な資料、業務マニュアルなどは最新のものをクラウド上で共有します。社内外のどこからでも情報にアクセスできるようにして、「この人に聞かないと分からない」「あの人しか資料を持っていない」という状況を回避する取り組みが大切です。
出社勤務とテレワークで「評価や報酬に差が出るのでは?」という不安の声が上がる場合もあります。解決方法として、どんな成果を求め、いかに評価するのか、その基準を明確に打ち出すこともテレワークの運用には不可欠です。問題があれば、成果報告の仕方や評価基準などを整備していきましょう。
そして、出社勤務でもテレワークでも、社員同士が気兼ねなくコミュニケーションできる状況を作るのも大事です。例えば、以下のような状況ではそそれぞれに合わせたツールを使用しましょう。
徹底的にルールを整備しておくことで円滑にコミュニケーションができるでしょう。場合によっては、機器やツールの使い方、コミュニケーションスキルなどを磨くための研修も行います。
テレワーク社員に対して、企業からの支給品を使用しないようにルールを周知徹底するのも「テレワークはずるい」という声の予防になります。特に支給パソコンに業務と関係のないソフトをインストールしたり、個人アカウントでネットサービスを利用したりすることはウイルス感染のリスクとなるため、セキュリティの観点からも対策が必要です。
メリットよりもデメリットの方が大きいと判断したら、テレワークを取りやめるという判断もあります。一体感の醸成が必要な、設立したばかりの企業や、立ち上げたばかりのプロジェクトを盛り上げるために、あえてテレワークを避けるのも一つの手段です。
「テレワークはずるい」という声を減らし、企業がテレワークのメリットを享受するためには、出社社員とテレワーク社員が双方の事情を理解し合い、企業側から公平に評価されると実感できることが重要です。
企業側には、ルールや制度を見直し、不満や不安なく働けるような環境を作ることが求められます。社員の声に耳を傾け、自社の実情にあった働き方を追及していけば、理想的な体制を実現できるでしょう。
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