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ダニング=クルーガーの実験とその考察

公開日:2021.10.19

    ダニングクルーガーの実験とその考察

    ダニング=クルーガー効果とは、「正しく自己評価ができず、自分の能力を過大評価してしまうこと」です。
    この現象を命名したのは、「デイヴィッド・ダニング」と「ジャスティン・クルーガー」です。
    ダニングとクルーガーの2人が行った実験から「ダニング=クルーガー効果」と命名されました。

    デイヴィッド・ダニング : University of Michigan(ミシガン大学)
    デイヴィッド・ダニング : University of Michigan(ミシガン大学)

    ジャスティン・クルーガー : NYU Stern(ニューヨーク大学の経営大学院)
    ジャスティン・クルーガー : NYU Stern(ニューヨーク大学の経営大学院)

    ダニング=クルーガー効果の定義と歴史

    2000年にはイグノーベル賞を受賞して、世界中で注目されるようになりました。
    実は、優越の錯覚に関する認知バイアスはダニング=クルーガー効果の定義よりも以前から言及されていました。
    釈迦、キリスト、孔子ソクラテスの四聖人のうち2人が、ダニング=クルーガー効果に通じる言葉を残しています。

    紀元前551年~479年:孔子「真の知識は、自分の無知さを知ることである」
    紀元前470年~399年:ソクラテス「無知の知」
    1599年:ウィリアム・シェイクスピア「愚か者は自身を賢者だと思い込むが、賢者は自身が愚か者であることを知っている」

    ダニング=クルーガー効果は日本語で「夜郎自大(やろうじだい)」という言葉が当てはまります。
    「自分の能力を知らずにいばっている」
    「広い世界を知らずに自分の力を過大評価している」
    と、まさにダニング=クルーガー効果と同意義の言葉として用いられます。

    2人は1999年に「優越の錯覚を生み出す認知バイアス」についての論文
    “Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One’s Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments”
    (日本語訳=無能であることに気づかない:自分の無能さを認識することの難しさが、自己評価の肥大化につながる)を執筆しました。
    2000年にはイグノーベル賞の心理学賞を受賞して心理学部門に大きな影響を与えました。

    ちなみに、ダニング=クルーガー効果の逆は「インポスター症候群」です。両者の違いは以下のようになります。

    • ダニング=クルーガー効果は「過大評価」
      ・・・例:他人にも高圧的になるなど
    • インポスター症候群は「過小評価」
      ・・・例:責任から逃げたがるなど

    どちらも周囲の環境が主な要因であるものの、対処方法は異なる点に注意が必要です。

    ダニングとクルーガーの実験

    ダニングとクルーガーの実験

    “they suffer a dual burden: Not only do they reach erroneous conclusions and make unfortunate choices, but their incompetence robs them of the ability to realize it.”
    ダニングとクルーガーの論文から引用

    論文では、ダニング=クルーガー効果によって、「二重の負担を強いられることになる」(they suffer a dual burden)と表現しています。

    二重の負担は以下の項目です。

    • 誤った結論に達し、不幸な選択をしてしまう。
    • その無能さゆえに、それに気づく能力も奪われてしまう

    研究論文にはチャールズ・ダーウィンの言葉を引用して、「無知は、知識よりも自信を生むことが多い」とも書かれています。

    実際に改善の機会が与えられない場合、ダニング=クルーガー効果が発生し、会社全体に影響を与えることも少なくありません。

    ここでは、ダニング=クルーガー効果の実験内容についてみていきましょう。

    ダニングとクルーガーの実験内容

    ダニング=クルーガー効果の実験は過去に、いくつかの分野で別の集団を対象に数回の実験を行い、総合的に数値化したものが論文に記載されています。

    その中でも、特に有名なものが学生を対象とした心理学試験での「予測した点数」と「実際の点数」です。

    実験の内容は、238人の学生のうち124人の大学生にいくつかの筆記試験を行ってもらい、解答直後にその成績を自身で評価するというものです。自身がどれだけのスコアを稼げたかを予測して、実際の数値とその差分がどのように現れるかをみるというものでした。

    ダニングとクルーガーの実験結果

    ダニングとクルーガーの実験(パフォーマンス)

    Aの図 Percentile Estimates(パーセンタイル推定)
    自身が集団の中で、どの位置にいるかを推定したものと実際の位置を表したものです。

    対象となった生徒が予測した習熟度やパフォーマンスは、四分位数で見ても上位と下位に大きな差がありません。

    実際のパフォーマンスは上位と下位で大きな乖離がありました。パーセンタイル推定では、四分位数のTOPはほぼ正確に予測できました。
    つまり、パフォーマンスの低い生徒ほど自身を過大評価していたといえます。

    ダニングとクルーガーの実験(スコア)

    Bの図 Raw Score Estimates(スコアの予測)
    予測したスコアと実際のスコアを表したものです。

    予測したスコアは四分位数で見ても上位と下位に大きな差がありません。

    実際のスコアは上位と下位で大きな乖離があります。

    スコアの予測でも同様に、四分位数のTOPはほぼ正確に予測できました。
    つまり、スコアの低い生徒ほど自身を過大評価していたといえます。

    この実験では、「集団において自身の能力値や習熟度がどの程度なのか」という予測を行ったとき、比較的能力が低い人物に自身の予測値と大きな乖離が発現する傾向があるといえるでしょう。

    「テストにおいて自身のスコアはこれくらい」という予測を行ったときも同様に、比較的能力が低い人物に自身の予測値と大きな乖離が発現する傾向があることがわかります。

    ダニングとクルーガーの研究では、「自分は平均値よりも少し上くらいだろう。と予測したものの、実際のスコアは集団の中で最下位で、自身の評価と現実の評価に乖離が現れる」という結果となりました。

    ダニング=クルーガー効果の影響

    実験の内容は日常でもよく現れます。
    「自分は他の人よりも仕事をうまくできる」
    「自分は平均よりも学力が高い」
    「自分のテーブルマナーは完璧だ」

    このように思い込んでしまって、正しく自己評価ができない状態です。

    ダニング=クルーガー効果は日常生活やビジネスにも影響します。
    自分の能力を過大評価してしまっていると、会話が嚙み合わないなどコミュニケーションが悪化するかもしれません。
    自分は優秀で仕事ができると思って、能力以上の仕事を請け負って失敗してしまうかもしれません
    外見や容姿、作法や振る舞いに自信を持っていても、実際の評価はずっと低く、大事な場面でも必要以上に痴態を晒してしまうかもしれません。

    自身の能力がほかの人よりも優れていると思い込むケースは少なくありません。
    「私の方が詳しい・私の方が効率よくできる・私はこうやって仕事をしてきた」といった思い込みが強いほど、ダニング=クルーガー効果に陥っている可能性が高いと言えます。

    ダニング=クルーガー効果は、原因と対処法を知っていれば十分に対応が可能です。
    ダニング=クルーガー効果についての記事を読んでしっかりと理解しましょう。




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    この記事を書いた人

    TOYO

    株式会社アックスコンサルティング マーケティング本部 WEB制作課所属。
    メンタル心理ヘルスカウンセラー、メンタル心理インストラクターの資格を活かして人事向けの記事を中心に執筆。仕事に纏わる悩みに対し、カウンセリング倫理、心理アセスメント、地域精神医療などの観点から明るい毎日を送れるように記事を執筆しています。

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