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ダニング=クルーガー効果とは?陥りやすい人の特徴と対処法

公開日:2021.9.7

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ダニング=クルーガー効果とは?

ダニング=クルーガー効果とは「正しく自己評価ができず、過大評価してしまうこと」です。
認知バイアスと呼ばれる心理現象のひとつで、これまでの経験・先入観・直感などが作用して実際の評価と乖離した「錯覚」のことを意味します。能力の低い人が他人の能力を認識できずに、自身の方が優れていると考え、正しい自己評価ができない非合理的な心理現象の一つです。

ダニング=クルーガー効果は、経験・先入観・直感などが作用して実際の評価と乖離した「錯覚」が要因です。

※認知バイアスとは、認知心理学や社会心理学で使われる用語で、生活習慣や人生経験、思い込みや固定観念が原因となって非合理的な判断や行動をとってしまうことです。

例えば、「能力の低い人が他人の能力を認識できずに、自身の方が優れていると考え、正しい自己評価ができない非合理的な心理現象が生じている状態」はダニング=クルーガー効果に該当します。
自意識過剰と混同されがちですが、意味が異なります。自意識過剰は、他人が自分に対してどう思っているかを意識し過ぎた状態のことです。むしろダニング=クルーガー効果とは反対の言葉です。

「ダニング=クルーガー効果」(Dunning-Kruger effect)の由来は、心理学者の「デイヴィッド・ダニング」(David Dunning)と「ジャスティン・クルーガー」(Justin Kruger)が行った「なぜ能力の低い人間は自身を素晴らしいと思い込むのか」という研究から、彼らの名前で命名されています。

ダニング=クルーガー効果の定義と歴史

・定義
認知バイアスのひとつで、自身の能力や容姿、言動や立ち振る舞いなど様々な場面において、実際の評価と自己評価にズレが生じる心理現象の一つです。
この時、自己評価が客観的評価よりも高い場合(=過大評価)をダニング=クルーガー効果と定義しています。
ダニング=クルーガー効果は1999年に論文で効果を示し、ダニングとクルーガーに定義されました。

・歴史
2000年にはイグノーベル賞を受賞して、世界中で注目されるようになりました。



ダニングとクルーガーの実験

ダニングとクルーガーの実験内容は、238人の学生のうち124人の大学生にいくつかの筆記試験を行ってもらい、解答直後にその成績を自身で評価するというものです。自身がどれだけのスコアを稼げたかを予測して、実際の数値とその差分がどのように現れるかをみるというものでした。

ダニング=クルーガー効果の逆

ダニング=クルーガー効果の逆は「インポスター症候群」です。両者の違いは以下のようになります。

  • ダニング=クルーガー効果は「過大評価」
    ・・・例:他人にも高圧的になるなど
  • インポスター症候群は「過小評価」
    ・・・例:責任から逃げたがるなど

どちらも周囲の環境が主な要因であるものの、対処方法は異なる点に注意が必要です。

ダニング=クルーガー効果の曲線

 

ダニング=クルーガー効果の曲線
ダニグクルーガー効果では上記のような曲線図が広く取り上げられます。

ダニングクルーガーの曲線は、自信と知恵を表現するものです。縦が自信、横が知恵を表します。

知恵の成熟度が増加するにつれて、自信が変動していることが把握できるでしょう。

①最初に少しの知恵を得た時は、完全に理解したような気持ちになって
「私は優秀だ!」と自身に満ち溢れています。
馬鹿の山(Peak of “Mount Stupid”)とも呼ばれます。

②もう少し学びを進めると、全体の大きさを知って
「まだまだ足りなかった」と自信を失っています。
絶望の谷(Valley of Despair)」とも呼ばれます。

③更に学びを進めると、成長を実感して
「少しわかってきた」と自信を持ち始めます。
啓蒙の坂(Slope of Enlightenment)」とも呼ばれます。

④更に学びを進めると、知恵が成熟して
「これは得意だが、これは得意ではない」と正確な自己評価が行えるようになります。
継続の大地(Plateau of sustainability)」とも呼ばれます。

ダニング=クルーガー効果で特に取り上げられているのは①の「私は優秀だ」の状態です。

知恵や経験、能力が低いにもかかわらず、周りが見えずに自信に満ち溢れている状態は、自身を過大評価してしまっているといえます。
『自分が「そのことについて知らないという事実」を知っていること』(無知の知)が重要だということです。

ダニング=クルーガー効果によって引き起こされる影響

ダニング=クルーガー効果によって引き起こされる影響は過大評価だけに止まらず、社会性にも大きく影響します。具体的には以下のようなものです。

以下のように様々な部分で認知バイアスによる非合理的な言動や行動に影響を及ぼすことを知っておきましょう。

ダニング=クルーガー効果の影響
❶自身を過大評価してしまう
自身の能力以上に自身を評価してしまうと、集団の中での自身の立ち位置を誤ることにつながります。
ビジネスシーンにも影響を及ぼし、能力以上の仕事を請け負ってしまい処理できないなるケースも少なくありません。❷成長の機会を失ってしまう
自身の能力が優れていると満足し、不足している部分に気づきづらくなります
また、勉強や運動、仕事においても足りない部分を補う努力をしなくなる点に注意が必要です。

❸自他の評価ができなくなる
自分の方が優れていると一貫して錯覚しているため、自分や他人を評価できなくなることにつながります。
集団の中で「他人の立ち位置に納得しない。」「自身の方が優れているのに評価されない。」「上司に嫌われているから評価されないだけ。」など、自身の評価を絶対として、集団としての評価を受け入れられなくなります。成果の数字や過程の状況などを加味せずに、ダニング=クルーガー効果特有の非合理的な思考になりがちです。

❹問題を他責にしてしまう
問題が発生した時に、自身の能力は優秀なので解決できると思っていても、自身を過大評価していた場合には問題の解決が難航することにつながります。
とくに、「自身の能力は問題を解決するにあたって十分優れているはずだ。それなのに解決できないのは関わっている他の人の能力が低いから」など、自身の能力を否定せず、他人の能力を否定してしまうケースは多いといえます。
また、問題が発生した時に、対処できる能力がないことに気づけず解決が遅れる点も把握しておきましょう。

❺コミュニケーションが難しくなる
集団の中の立ち位置や評価が正確に行えず、正しい自己評価ができないと会話がかみ合わなくなることにつながります。
合理的な仕事の話においては顕著に現れます。能率や生産性に問題を抱えた話題において、自分や他人の評価に理解が及ばないと話がかみ合いません。
日常会話であっても、他人の努力や成果を評価できずに上手に会話に参加できない、突拍子もない意見で会話の流れを遮ってしまうこともあります。

❻騙されやすい
自分は優秀だから騙されない。と根拠のない自信を持っている人ほど騙されやすいものです。
技術や容姿などを褒められて、評価を疑わずに決断してしまいがちです。
金銭詐欺に繋がることからも、特に注意が必要です。



ダニング=クルーガー効果の原因と陥りやすい人の特徴

ダニング=クルーガー効果には、原因や陥りやすい人の特徴があります。いくつかの条件を満たす場合には、ダニング=クルーガー効果が発現する可能性が高い傾向がみられます。

ダニング=クルーガー効果の例

ダニングクルーガー効果に陥っている人は次のような言動や行動で失敗が見られます。
・株式取引
100万円で株式取引を始めて1か月で資産が150万になった。自信があるので追加で200万を投資した。
予測がはずれ、資産が激減してしまった。
・ビジネス
同期よりも自分が優秀だと思い込んで、能力を超えた仕事を請け負う。
業務が処理しきれず、問題を起こしてしまった。
・日常生活
自分ならできると思って、作ったことのない料理をレシピを見ずに作る。
友人に料理を振舞ったものの、評価は低かった。
・容姿
周囲の評価に耳を傾けず、自分の容姿を非常に良いものだと思い込み、自信に満ち溢れた言動や行動を行う。
コンテストに参加したものの、思っていたよりも評価は低かった。

このように、ダニング=クルーガー効果の例では、自信に満ち溢れた状態で客観的な判断ができないまま失敗してしまっています。
では、どうすればよいのか。まずは、その原因と発現する可能性の高い人の特徴をみていきましょう。克服・対処法は後述しています。

ダニング=クルーガー効果の原因

ダニング=クルーガー効果の原因

ダニング=クルーガー効果が発生する原因は、メタ認知の欠如にあります。

多くの人々は、自身の限られた主観で自身を評価します。この非常に小さく限定された観点からでは、比較対象が少ないため、自身の能力は十分に熟練していると錯覚してしまう点に注意が必要です。この場合は、客観的な視野を広げることが大切になります。

メタ認知とは、自身が認識していることを、客観的に把握する事です。例えば、自分が知っていることを第三者視点で客観的に見たときに、「本当に知っていると言えるか」などを判断します。

メタ認知が行えない場合、「作業を遂行する能力が欠如しているという事実」を認識できません。そのため、勉学でも仕事でもあらゆる作業において、メタ認知が関わってくるといえます。成果を期待される作業において、できる・できない、得意・不得意を「他人と比較して能力が適正に値するかどうかを判断できる能力」も必要です。

現在の能力で作業を上手に行えるかの判断能力が欠如している場合、適材適所の判断ができずに非合理的な人材配置で生産性の悪化や現場の混乱を招きます。他人の能力を認めて適正な判断を行うように心がけなければなりません。

ダニング=クルーガー効果の曲線にあったように、小さな知恵を得た時にはメタ認知の欠如が表れるといえます。こ情報の全体像が見えないだけでなく、ほんの少しの情報を得ただけの状態にも関わらず、まるでその情報について完全に理解して熟知したように錯覚してしまうことが原因です

まったく情報を持っていない他人と比較すると自覚できない可能性があるものの、本当に熟知した他人と比較した時に過大評価だったと気づくでしょう。そのため、第三者との情報交流の場を増やすことも重要です。

ダングクルーガー効果に陥りやすい人の特徴

ダングクルーガー効果に陥りやすい人の特徴
ダニング=クルーガー効果は先天的な影響よりも後天的な影響を強く受けるものです。

ここではダニング=クルーガー効果がどのような人に表れやすいのかみていきましょう。生活習慣や物事の考え方、経験や先入観などが作用して、徐々に自己評価と客観的評価が乖離し始め、ダニング=クルーガー効果が発現します。

陥りやすい人の特徴
❶他人の意見に耳を傾けず、自身の考えを一貫して尊重する人。
自分だけの狭い範囲で自己評価をしている場合、どうしても周りとのズレが生じます。❷他人の意見を聞く機会がない人。
リモートワークなどで会話が不足して他人の意見を聞く機会がない場合、第三者からの客観的な意見を取り入れづらくなり、固定観念にとらわれてしまいがちです。

❸自身の過ちとして認識できない人。
問題を起こしてしまったときに自身の過ちを認識できない場合、過ちを他責にしてしまいがちとなるだけでなく、自己分析もできなくなります。

❹原因を追究しない人。
「なぜ成功したのか・なぜ失敗したのか」、タスクの成功や失敗に対して原因を追究しないと、成功の蓄積や失敗の反省ができないまま「やりきった」と思いがちです。

❺目標や過程が定まっていない人。
目標や過程の設定が曖昧な状態では、達成しているかどうかの客観的な判断が難しくなります。

❻タスクを上手でないと認識できない人。
能力を正常に認識できないと、自信のタスクに対して適正を判断できなくなります。

❼完全に理解したと錯覚している人。
ダニング=クルーガー効果の曲線にあったように、少しの知恵を得たばかりで周囲が見えなくなってしまう人は、過大評価しがちです。

❽メタ認知、客観的評価が不足している人。
前項でも触れましたがメタ認知、客観的な評価が不足している場合、現実の評価とのズレが生じてしまいます。

そして、ダニング=クルーガー効果に陥りやすい人の特徴の大部分は「第三者に意識を向けない人」です。無意識化で行っているメタ認知に現実とのズレが生じたとき、自己評価に影響します。


ダニング=クルーガー効果の克服・対処法

ダニング=クルーガー効果の対処法

ダニング=クルーガー効果の影響を受ける可能性は誰にでもありますが、原因や対処法を知っておくことで、事前に対処することが可能です。
また、すでにダニング=クルーガー効果だと診断されたとしても、克服することができます。

ダニング=クルーガー効果に陥った人に必要な要素は「認知する能力」です。

他人を認知して評価する、自分を認知して評価するなどといった訓練が大切です。では、以下でダニング=クルーガー効果に対処するための方法をみていきましょう。

事前に対処する方法と克服する方法
1.メタ認知
会社全体で認知バイアスに関する研修を行いましょう。ダニング=クルーガー効果となっている状態であることを公表し、自身を考察する機会を与える事で改善への糸口を作れます。

また、このような研修を個人に対して行うこで、自身を否定されているような受け取り方をされるリスクもあるため、言い方に注意が必要です。

2.数値の明確化
成果や過程を数値化して結果に繋がったかどうかを明確化します。細分化してどこの数値が足りないのかを理解することで、自身の評価がより客観的・正確に把握できるため、改善につなげられます。

3.原因の特定と振り返り
「なぜ成功した・なぜ失敗した」といった原因を特定し、振り返る事で十分だった能力・不十分だった能力が認識できるようになります。また、次の行動の改善を促すことが可能です。

4.他社の意見を聞き入れる
社内でフィードバックの機会を増やす、客観的な評価を行える場を設けて事実を明確化することで錯覚と現実とのズレを改善できます。
より多くの意見を取り入れるようにすることで、個々の偏見をなくした客観的な見方ができるようになります。

ダニング=クルーガー効果のメリット

ダニング=クルーガー効果は悪いばかりではない

ダニング=クルーガー効果は悪い面が目立つものの、程度によってはメリットとして強みにもなります。以下でみていきましょう。

1.発言力
自己評価が高い人は、「自身の発言に引け目を感じず、人に意見する」ことができます。ディスカッションの場では発言しない人間よりも、発言する人間の方が評価は高くなるため、そういった場所であれば活躍可能です。

どのような意見であれ、発言することでディスカッションに参加したといえるでしょう。現代において発言できることは、会社や教育の場では非常に大きな強みになります。

2.行動力
失敗を恐れないわけではないものの、本来の能力よりも行動範囲が広がります。明らかに無理難題に飛び込むような状況でない限りは、多少の過大評価は行動力につながります。失敗を恐れて行動しない人が多い日本社会においては、このような行動範囲を広げることは良い挑戦として評価される可能性は低くありません。(例えば、新規事業の補佐役などは適任です)

3.自信
発言力や行動力にもつながりますが、過大評価で得られる自信もあります。発言や行動に自信がある場合、新しいプロジェクトに積極的に参加したり、自信のある営業トークで成果を出す可能性も低くありません。

このようにダニング=クルーガー効果は良い部分も併せ持っています。程度にもよるものの、あくまで心理現象であるため、徹底した改善が必須という訳でもありません。個々の特性を活かせる環境があれば、十分に活躍できるでしょう。

しかし、会社や友人、親族や身の回りにダニング=クルーガー効果に陥っていると思われる方はいませんか?

一概にダニング=クルーガー効果が悪いものだとは言えませんが「なんとなく付き合いづらいと避けてきた」方に対して、「このような心理状態だったのか」と理解する事で、今後の付き合い方も変わってくるでしょう。

場合によっては、社内状況の把握のため、「ダニングクルーガー診断」や「メタ認知に関する研修」を行うことも大切です。


ダニング=クルーガー効果に関するよくある質問

ダニング=クルーガー効果に関するよくある質問

ダニング=クルーガー効果とは?
ダニング=クルーガー効果とは「正しく自己評価ができず、過大評価してしまうこと」です
認知バイアスと呼ばれる心理現象のひとつで、これまでの経験・先入観・直感などが作用して実際の評価と乖離した「錯覚」のことを意味します。能力の低い人が他人の能力を認識できずに、自身の方が優れていると考え、正しい自己評価ができない非合理的な心理現象の一つです。
ダニング=クルーガー効果は対処できる?
メタ認知や数値の明確化、原因の特定や振り返りでフィードバックの機会を増やすなど、客観的な評価を取り入れる事で現実とのズレを解消できます。まずはダニング=クルーガー効果を診断してみましょう!診断はこちらをクリック。
ダニング=クルーガー効果の原因は?
「メタ認知の欠如」です。わかりやすい例では、「できる・できない、得意・不得意などを客観的に評価できない状態」であれば、ダニング=クルーガー効果(正しい自己評価ができない非合理的な心理現象)が発現する状態といえます。

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この記事を書いた人

TOYO

株式会社アックスコンサルティング マーケティング本部 WEB制作課所属。
メンタル心理ヘルスカウンセラー、メンタル心理インストラクターの資格を活かして人事向けの記事を中心に執筆。仕事に纏わる悩みに対し、カウンセリング倫理、心理アセスメント、地域精神医療などの観点から明るい毎日を送れるように記事を執筆しています。

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