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HSPが悩む、仕事がつらい理由、仕事が続かない理由とは?
公開日:2022.1.18
HSPの社員は、繊細な気質のせいで他の社員よりもストレスを抱えやすい傾向にあります。社員のメンタルヘルスケアを管理する立場にある人事担当者は、HSPの社員が抱えやすい悩みについて知っておく必要があります。本記事では、HSPが仕事をつらく感じる理由や仕事が続かない理由について詳しく解説します。
目次
HSPの特徴
HSPとは、生まれつき繊細な気質をもった人のことをいいます。日本では、HSPカウンセラー武田友紀氏の著書「繊細さん」シリーズがヒットしたことで、HSPの存在が広く知れ渡るようになりました。
HSPの特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。簡単に紹介します。
・1つのことをじっくり考える
1つの物事に対して、深く掘り下げて考え抜いたり、想像を膨らませて複数のアイデアを考えたりするようなことがHSPの人は得意です。
ただし、考えが深すぎることで行動に移すまでに時間を費やしてしまうようなことも、多々見受けらることがあります。
・些細なことにも敏感に反応する
たとえば、他人が悪気なく発したさりげないひと言に傷ついてしまうことや、場の空気を読み過ぎて気疲れしてしまうようなことが挙げられます。
あまりにも敏感なため、疲れやすいというのもHSPの特徴にあります。
・共感力が高い
たとえば、感動的な映画やドラマにでてくる登場人物や話の内容に深く感情移入して、涙を流すようなことがあります。
職場では、近くで同僚が怒られていると、まるで自分が怒られているような気分に陥ったりするようなことも。
HSPは共感力が高いゆえに、相手やその場の雰囲気に飲まれやすいということが言えるでしょう。
・過剰に影響を受けやすい
HSPの特徴は他にも、感覚が敏感であることがあげられます。
たとえば、時計の秒針の音や太陽の日差しなど、他の人が気にならないような些細な音や光、においなどに敏感に反応してしまいます。
また、洋服のタグなど肌に触れるとチクチクするような素材が気になりすぎることもあります。
このように感覚が敏感に働くので、仕事に集中できないほど気になってしまうこともあるのです。
HSPについて詳しくはこちら↓
仕事がつらい理由、仕事が続かない理由
参考:第37回アンケート集計結果「「仕事におけるストレス」について」(https://mid-tenshoku.com/enquete/report-37/)
HSPの人が仕事がつらいと感じる、または続かない理由には、HSP特有の気質によるものが考えられます。具体的にどういうことなのか、つぎに詳しく見ていきましょう。
必要以上に物事を深く考えてしまう
些細なことにも良く気がつき、相手の感情や場の空気を読み取ることに長けていますが、物事を深く考えすぎてしまう習性があります。
深く考えるあまり、必要以上に相手のことを気にしすぎてしまったり、将来のことまで考えて不安を抱いたりなど、ネガティブな思考に陥りがちです。
職場の同僚とその場では楽しく食事をしていても、家に帰ってからどっと疲労感がでてしまうのは、HSPの特性が大きく影響しています。
感情が繊細すぎるため疲れやすい
HSPの人は感情がとても繊細にできています。
そのため、他の人がさほど気にならないようなことでも、敏感に感じ取って反応してしまうのです。
たとえば、相手の声のトーンやその場の雰囲気、さりげなく発したひと言など、日常の些細なことですら気を止めてしまうことがあります。
また、人間関係以外の所でも、音や光、においといった感覚的な部分にも敏感に反応してしまうことあるのです。
非常に繊細であるがゆえに、感情や感覚が過剰に働き過ぎて疲れてしまうことが、仕事が続かない理由の要因にもなっています。
共感力が高く外的影響を受けやすい
HSPの特徴のひとつに、共感力の高さがあります。
相手の気持ちに共感して寄り添うことができるため、相手からは好感をもたれることが多いでしょう。
その反面、自分と相手との心の境界線が薄いため、相手の感情の影響を受けやすいといった一面もあります。
たとえば、他人が怒られたり悲しんだりする姿をみて、自分も同じように人から怒られたり、悲しい気持ちになったりすることがあります。
もし、職場の人間関係が良好でないようであれば、周囲の人に振り回されて気疲れを起こしてしまうでしょう。
HSPは仕事中のどんなときにつらいと感じる?
HSPの人は、つらいといった感情を表向きにはあまり出さないため、本人がつらくとも周囲が気づかないケースがあります。HSPの人が仕事中につらいと感じるのはどんな時なのか、次に詳しくみていきましょう。
職場の雰囲気
HSPは共感性が高く、周囲の雰囲気を敏感にキャッチしてしまいます。
周囲の怒鳴り声などを聞くと、まるで自分が怒鳴られているかのように感じてしまい、仕事に集中できないどころか非常に大きなストレスになります。
人前で発言しないといけない雰囲気や結果を出さないといけないプレッシャーにも敏感で、極度な緊張状態が続くと心身共に疲弊してしまいます。
光・音・におい
蛍光灯の眩しさや鳴り響く電話の音、大きな声での雑談、工事中の音、汗のにおい、食事のにおい、埃などにも敏感に反応してしまって、つらい思いをしています。HSPでない人にとっては些細なことでも、HSPはストレスを強く感じることがあります。
視界に入る、貧乏ゆすりやペンを回すクセなどが原因で仕事に集中できないなどがあります。
トラブルに対処しなくてはならないとき
仕事をする上で、自分に非がなくともトラブルに対応をしなくてはならない時があります。
たとえば、顧客との間で生じたトラブルによるクレーム処理。
この時、相手から一方的に責め立てられることがあれば、心の境界線がもろいHSPの人は、非が別の所にあっても自分のせいのように感じてしまい、自分を責め立ててしまいます。
また、怒りのパワーがHSPの繊細な感情に大きなダメージを与えてしまい、仕事がつらいと感じる原因にもなってしまうのです。
周囲の目が気になってしまうとき
職場の上司や同僚の目を、必要以上に気にしまうのもHSPの人の特徴です。
もし、上司や同僚がイライラしているのに気づいてしまった時は、瞬時に思考を巡らせます。「何か仕事でミスをしてしまったのかも」とか、「自分が話した内容で気に障ることがあったのかも」といったように、自分の発言や行動に非があるでのはと深く考え込んでしまいます。
周囲の目を気にしすぎるあまり、人間関係が上手くいかなくなってしまうことや、仕事がやりづらくなってしまうこともあるのです。
自分のペースで仕事ができないとき
HSPの気質の中には、深く物事を考えて行動するといった気質があります。
仕事においても、ミスが無いようじっくりと考えてから慎重に行動するため、時間がかかることが往々にしてあります。
スピード感をもって取り組まなければならない仕事やプロジェクトだと、人よりも時間がかかってしまうことがプレッシャーとなりストレスを感じてしまうでしょう。
さらに、周囲から急かされることで、過度のストレスに晒されることになってしまうのです。
ストレスを放置すると、仕事にどんな影響がある?
上述ではHSPが仕事中でどんな時につらさを感じるかについて紹介しました。次に、HSPの仕事のつらさを何もせず放置することによって、仕事にどんな影響を及ぼすかについて解説していきます。
ミスが多くなる
職場の環境や人間関係が良くないことで生じる不穏な空気に、繊細であるHSPの人は人一倍強く影響を受けてしまいます。
周囲の目や言動を気にしすぎるあまり、仕事に集中ができなくなって、ミスが多くなってしまうでしょう。
また、「自分のせいで周囲に迷惑をかけている。だからミスしてはいけない」とプレッシャーを感じることで負の連載に陥ってしまい、さらなるミスを引き起こす原因になってしまうのです。
繊細な感情をもつHSPの人にとって、プレッシャーや緊張感はミスを多くすることにつながります。
仕事に対して消極的になる
高い共感性をもつHSPの人は、相手を責めることをほとんどしません。逆に、相手のことを自分よりも重んじる傾向があります。
その一方で、相手のことを自分よりも尊重するあまり、何かトラブルがあった際は、相手ではなく自分に非があるのではないかとネガティブな感情に陥りやすいといった性質があります。
自己肯定感が元々低いこともあり、自分を責めることでさらに自己肯定感が下がり、仕事に対して消極的になってしまうでしょう。
状況が改善されなければ、業務のパフォーマンスが低下する恐れもあります。
ストレスにより体調不良を起こす
感情や感覚が繊細であるため、他人が気にならない些細なことにも敏感に反応してしまいます。つまり、ストレスに非常に晒されやすい気質をもっているということが言えるのです。
ストレスを抱えていても、他人には知られないように上手く隠したり、打ち明けることもないので、1人でどんどんストレスを抱え込んでしまいます。
やがて、積み重なったストレスによって体調不良を引き起こしたり、最悪の場合は病気になってしまうこともあります。
現代社会と若者のHSP
全人口の約20%、5人に1人はいるとされているHSP。ここ数年で注目されるようになり、最近では著名人がHSPであることを公表する場面も見受けられます。
ここまでHSPが注目されるようになった背景には、SNSの普及が関係しているでしょう。ネット上で容易に人との繋がりを実現するSNSは、ここ数年で若者の間で急速に広がっていきました。
さらに、人との接触が制約されたコロナ禍が、SNSの普及を後押ししたのもあります。SNSが普及したことで、もともと繊細な感覚をもつHSPの人は、SNS上の書き込みなどから影響を受ける機会が増えてしまったのです。
特に若者のHSPは、SNSによる感情への影響と最近のHSPの注目が重なって、自分もHSPなのでは無いかと自覚するケースが増えているようです。
新入社員や若手社員の中にも、HSPで働きづらさを感じている人がいるかもしれません。本人から言い出すのが難しい場合もあるため、周囲の人が気づいて配慮してあげることが今後ますます必要となるでしょう。
HSPの人が仕事と向き合う方法
HSPは普段から周囲の人や仕事に対して一生懸命頑張ってしまう傾向があるため、時には力を抜くことも必要であることを知った方が良いでしょう。ここでは、HSPの人が仕事と向き合うおすすめの方法について解説します。
無理をして人と関わろうとしない
HSPの人は、必要以上に周囲に気遣いをしてしまう傾向にあるため、家に帰るとどっと疲れが押し寄せてくることがあります。
特に、職場に苦手とする人がいる場合でも、相手と良好な関係を築こうと頑張るあまり、普段以上に気疲れをしてしまうものです。
こんな時は、無理に苦手とする相手と良好な関係を築こうとしなくても大丈夫。
普段は適度な距離感を保ちながら、どうしても関わらなくてはいけない時にだけ頑張れば良いのです。
1人で仕事を抱え込まない
周囲の状況に良く気がつき細やかな配慮を得意とするHSPの人は、職場で困っている人を見かけたら放ってはおけず、つい仕事を手伝ってしまいます。
また、仕事を頼まれたら嫌と断われずに、引き受けてしまうことも。このように自分の仕事がどんどん増えていっても、周囲に手伝いを申し出ることができず、1人で抱え込む結果になってしまうのです。
自分の仕事に余裕がない時は、他人の仕事を断っても構いません。大切なのは自分のやるべき仕事を終わらせることです。
無理して他人の仕事を手伝い、自分を追い込む必要はないのです。
過去のミスを引きずらない
仕事に失敗やミスはつきものです。失敗やミスをした際は、反省をすることはもちろん大切ですが、次の仕事に影響が出ないよう気持ちを切り替えることも必要でしょう。
HSPの人は、この気持ちの切り替えを苦手としています。
失敗やミスがあると、「あの時こうすれば良かったな」といつまでも過去に囚われてしまうのです。過去に囚われて続けていると、ストレスばかりが溜まってしまい、いつまでも前を向くことができません。
終わったことで自分を責めるのは止めて、「次こそは上手くやるぞ」といった気持ちで前を向くことが大切です。
【まとめ】HSPが抱える仕事の悩みを知り、人材マネジメントに役立てよう
HSPの人は生まれもった気質のせいで、仕事が上手くいかなかったり職場になじめなかったりと、人知れず色々な悩みを抱えています。
自社でHSPの社員に活躍してもらうには、まずHSPが仕事上で抱える悩みや、つらいと感じてしまう仕事の内容について知ることが必要でしょう。
最近はSNSが普及したこともあり、HSPの人が生きづらさや働きづらさを感じる場面が増えてきています。
新入社員や若手社員の中にもHSPで悩んでいても、言い出せずにいる人もいるでしょう。本記事でHSPの悩みの理由を知り、職場の環境づくりに役立てて頂けると幸いです。
この記事を書いた人